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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
 今夜の月は濃艶な色香を放つ女人を彷彿とさせた。俊秀はあまりにも美しすぎる月から眼を逸らし、妻の姿を探す。
 しかし、愛し求めてやまぬ妻の姿はここにもなかった。
 俊秀の心が絶望と不安で闇に覆われた。一体、どこに行ったのか?
 とにかく、こうしてはいられない。すぐに心当たりをすべてしらみ潰しに当たってみなければならない。
 夜着から普段着ているパジチョゴリに着替えようと思い、扉を閉めようとしたまさにその時、彼の耳はカサリと小さな物音を捉えた。
 思わず振り向いた俊秀は声を上げそうになり、慌てて出かかった声を呑み込む。
 最初は、猫か犬が庭に迷い込んだのだろうと思ったのだが、よくよく見ると、それは猫でも犬でもなかった。
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