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九尾狐(クミホ)異伝
第3章 月夜の変化(へんげ)
大真面目に言う俊秀に、彩里が笑顔を見せた。
「お願いだから、そんな怖ろしいことを言わないで。あなたが私に出てゆけと言わない限り、私はけして、あなたの傍から離れたりはしません」
俊秀は妻のやわらかな身体を引き寄せ、そのつややかな黒髪に顔を押し当てる。
「俺からも頼む。けして、俺から離れないでくれ。ずっと、俺の傍にいて欲しい」
「あなた、今夜は少しおかしいわ。私たちは祝言も挙げた、世にも認められた夫婦なのよ。妻である私があなたの傍から離れるわけがないではありませんか?」
「―俺は不安なんだ。お前はあまりにも綺麗だし、俺なんかには勿体ない女房だ。今でも、何で俺のようなしがない薬売りに、お前みたいな良い女があっさりと嫁に来てくれたのか判らない。何だか、あまりにも幸運で―人生のすべてのツキを使い果たしてしまったかのような気がして不安で堪らない」
「お願いだから、そんな怖ろしいことを言わないで。あなたが私に出てゆけと言わない限り、私はけして、あなたの傍から離れたりはしません」
俊秀は妻のやわらかな身体を引き寄せ、そのつややかな黒髪に顔を押し当てる。
「俺からも頼む。けして、俺から離れないでくれ。ずっと、俺の傍にいて欲しい」
「あなた、今夜は少しおかしいわ。私たちは祝言も挙げた、世にも認められた夫婦なのよ。妻である私があなたの傍から離れるわけがないではありませんか?」
「―俺は不安なんだ。お前はあまりにも綺麗だし、俺なんかには勿体ない女房だ。今でも、何で俺のようなしがない薬売りに、お前みたいな良い女があっさりと嫁に来てくれたのか判らない。何だか、あまりにも幸運で―人生のすべてのツキを使い果たしてしまったかのような気がして不安で堪らない」