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情欲の塔
第1章 俺は変態じゃねえ
何もないよりはマシか…。ちょっと寒いし。

階段を上がっていく。次の階も似たような部屋が続き、特に変わった様子もない。その次の階も。そのまた次の階も。特筆事項、なし。そんな感じが続いた。

「…何階上がればいいんだよ」
っていうかこの格好をどんだけ続けなきゃいけねーのか。

「あとトイレどこだ…」
寒さのせいもあってか、尿意がじわじわと迫っていた。キョロキョロと見回すと、それっぽいもんがある。

っていうか手書きで“トイレ♂”と書いてある。いろいろつっこみたかったが、あまり余裕はなかった(膀胱的な意味で)。とにかく助かった、といそいそと入っていく。

「トイレで合ってたか」
男性用の便器がいくつか並んでいる。奥には個室もあるようだ。何の気なしに一番手前の便器の前に立つと、異様さに気づく。

便器の中に、裸の女性が描かれていた。足を広げており、その真ん中の部分は、ちょうど放尿の当たる位置だ。

「げっ!!」
趣味悪…!!ドン引きしながらも、仕方なくそのまま用を足す。

「誰だよ、マジで。最悪すぎんだろ…」
こんなことを思い付くヤツはド変態に違いない…とトイレを出たところで、誰かとばったり会った。

「……あ」
と言うと、向こうも同時に同じ反応をした。

相手を見てみると、金髪の男性で美形。自分と同じように…いや、自分とは違い、まったくの全裸だ。そして、首からプレートを下げている。

『魔王』

「てめえか!!」
全部おまえの仕業だな、と相手につかみかかる。

「ちょっ…落ちついて。俺じゃないよ。俺も気づいたらここにいたんだ」
金髪イケメンが焦る。確かに、嘘を言っているようには見えない…。

話を聞いてみると、どうも俺と同じ境遇のようだった。

「っていうかキミ…」
金髪イケメンは、俺の下半身を見てドン引いていた。

「違っ…!全裸よりはマシだと思って…」

「………」

「さ、寒いし」

俺たちは、上階へ急いだ。
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