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家庭教師とその弟
第1章 先生いらっしゃい
「大分あったかくなってきたよねー。流石に夜は寒いけどさ…ねえ?」
二人の距離僅か20cmの沈黙が続いた。
私は何も答えられない。
というより、答えたらこの場所から先生がどこかへ行ってしまう気がして。
「りーかー…もしもしりかさん…」
先生は今、何を思っているのだろうか。変な子だと思ってるかな。また粗相をしたら、この前したあれを、してくれるのだろうか。ああ、またあれをやってほしい。ふと、そんな気分にかられた。
あれとは、おでことおでこをつけるあれだ。
2日前、次の用紙をめくろうとしたときに先生と手が触れてしまって、というよりこれもみこの作戦でわざと触れるタイミングを計ったんだけどね。私がわざとらしく、ごめんなさいと謝ると、なぜだか先生は私の首根っこを掴みおでこをくっつけてきて、「許さない」と言って離れた。みこの予想だと手を握ってくるとかなんかスキンシップがあるんじゃない?と言っていたけど、おでこつけただけでその後は何もなかったかのように授業が続いた。それだけだが、私にとって手が触れた1秒と、あれの3秒間は、涙が出るほど至福のときだった。
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