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幸せの時効
第10章 永遠
 声を噛み殺し堪えると、快感は増幅するのか、体の奥から焼かれるような錯覚を覚える。互いに求め合うと触れる指先にでも、快楽を覚えてしまう。肌を伝う汗と湯島の唇、何かを探し回るように触れられる指先。すべてが私の体を蕩かせていく。

「ゆず、まだだ。まだ……イかせないからな」

 首筋に軽く歯を立てられて、声を詰まらせた。執拗なまでの湯島の愛撫は、私が上り詰める少し前で動きを止める。どんどん体の中に熱が溜まり、その行き場をもとめていた。ドロドロに溶けたものがその熱を増し、今にも肌を焼き裂いて弾けてしまいそうだ。体で受ける快楽と、心で受け止める愛に私は感極まり、涙を流していた。

「ねえ、もう……お願い……」
「ダメだ、まだイかせない」

 緩やかな律動が続けられ、私は既に自分の中で小さな火花をあげていた。刹那的なその火花は散っては咲いて私を焦がす。

「ああ……、もうそろそろイかせてやる……。苦しいな、ゆず」

 子供をあやすように、髪をかき上げられて、頬に湯島の唇が触れた。その直後一気に最奥まで穿たれた。

 声が出ない。衝撃でのどを逸らしたせいか、空気が勢いよくのどを通る音がした。

「ゆず……っ」

 火花はひっきりなしに弾け、私の体を焼き焦がしていく。声にならない声を上げ、湯島の背中に爪を立てた。耳元で湯島の荒い息づかいと、うめき声が聞こえる。それだけで私は真っ白になった。

 初めての夜のことを思い出した。その時のみ痛み、湯島の熱、甘い疼き、そして愛しさを。

「……愛してる」

 湯島への愛が自然に零れていた。
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