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運命の恋人
第3章 間宮 智之
僕の家は、明治から続く造り酒屋で、職人さんも何人か雇ってる。
上に姉が1人いて、僕が長男だから、僕は高校を卒業したら地元の大学に進学して経営を学び、家業を継ぐ。
それが、父親の敷いたレールだったし、僕もそうなるものだと思っていた。
だけど、それでいいのか、という思いの他に、優美ちゃんとのことがあってから、この小さな街で暮らしていくのが苦しくなった。
僕が普通に、女の子を好きになれていたら…
僕に、僕は男性が好きだと、女性には興味がないと打ち明けて、彼女との交際を断る勇気があったら…
サトシさんに誘われた時に、拒む理性があったら…
こんなことにはならなかった。
僕には、どれひとつなかった。
僕の弱さが、 僕の不甲斐なさが、1人の女の子を深く傷つけ、人生を狂わせた。
一生十字架を背負って生きていく覚悟が、僕にはできなかった。

跡継ぎの問題もある。
僕が家を継いだら、いずれ結婚して跡継ぎを、と言われるだろう。
僕にそれができるのかも不安だった。
父には相談できなかった。
1人息子が、同性愛者だなんて、昔ながらの職人気質で厳格な父は思いもしないだろう。
どうしたらいいのかわからなくて、1人部屋に籠って泣いた。
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