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よくある恋愛モノ 〜見えない心〜
第5章 仮初め
「海?」
「うん。だって凪、ジェットコースターとか嫌いでしょ?」
この会話をしたのはいつのことだったか
遠い、記憶−−−
「昔は好きだったのにね」
ガキの時の話だろ、と凪はそっぽを向く
向きながらチラッと美和を見て、その笑顔に自分も顔を綻ばせて−−−
「なーぎーさくん」
ぼんやりと遠くを見る凪の背中に重みがかかり、白い腕が首に巻き付いた
「美和ちゃんのこと、考えてたんでしょ」
「……」
その問い掛けに凪は何も答えない
「……悠」
初めて名前を呼ばれ、悠の腕が驚いて緩む
凪は離れかけたその手を掴んだ
「凪……くん」
「温かいな、お前は」
美和と、同じだ−−−
「風が気持ち良いねー!」
同じ頃、美和と龍青は潮風に吹かれながら砂浜を歩いていた
「ねぇ、なんで海にしたの?」
子供に戻ったように水を跳ね上げながら自分の前を歩く彼女に呼び掛ける
「え、嫌だった? だって龍青、ジェットコースターとか嫌いでしょ?」
振り向いて笑顔を見せる美和に言葉が詰まる
「あっ……」