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よくある恋愛モノ 〜見えない心〜
第1章 揺れる気持ち
「おい……っ」
文句を言おうと前を見た視線の先に、一人の男が立っている
「克巳……」
「ぁ……奇遇だね、こんなところで会うなんて」
いつか見たような顔に凪は目を細めた
「お、久し振りです……先輩」
吃りながら会釈する克巳に、
「俺はもう先輩じゃない」
凪はふっと視線を外す
「じゃあ……お兄さん」
「あぁ!?」
あからさまに顔をしかめた凪を見て克巳と陽菜乃は楽しそうに笑っていた
「もう、冗談キツいよ!」
「ごめん、つい」
きゃっきゃっと騒ぐカップルを前に、凪は自分がからかわれたのだとようやく気付く
「斎藤…てめぇ……」
「陽菜乃の言うとおりだ」
若干ふてくされたような凪に克巳は続ける
「昔に戻ったみたいですね」
「昔?」
「もともと怒りっぽかったけど、俺たちの話聞いてくれたり、谷田先輩の時も……」
「やめろ」
過去を語り出した克巳を凄みのある声で遮る
今度は本気で怒っていた
「俺は何も変わらない。今も昔も、お前らが勝手な見方をしてるだけだ」
吐き捨てるように言い、陽菜乃を置いて先に行ってしまった