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よくある恋愛モノ 〜見えない心〜
第7章 合わないカケラ
「えっ? い、いやしかし旦那様が……」
星来はため息をつくと携帯を取り出して電話をかけ始めた
「あ、お父様?」
『おお、着いたのか星来』
「うん、今から友達の大学に行って来ます」
『……は!?』
電話口で大声を上げられ星来はパッと携帯を耳から遠ざける
『お前はどうしてそう気まぐれで我が儘なんだ! フランスでの婚約も……いや、とにかくさっさと帰って来なさい!』
「ごめんなさい、お父様」
謝罪の言葉を口にしながら、星来の顔からは全く悪びれた様子が見受けられない
「私はお父様の娘で、部下じゃないから」
言うだけ言うと、さらに続けようとした父の言葉を聞かずに星来は電話を切った
「お父様から許可が出たから、お願いね」
「は……」
運転手は屋敷へのルートから大学までの道へとハンドルを切った
もうすぐ夏休み−−−
蝉がうるさく鳴き始めた中、二人の男女が木陰に座っていた
「絶対ここ出ると思ったんだけどなー」
「そうやってヤマかけてるからあとちょっとが出来ないんでしょ」
「いや、僕は美和みたいに満点じゃなくてもいいかなー、なんて」
もうっダメでしょそんなんじゃ、そう笑い合う二人を凪は陰から見ていた
結局、来てしまった−−−
‘私が美和ちゃんのとこ行くから!’
あんな風に逃げ道を塞がれたらやるしかない
だが一体いつ声をかければ良いのか決めかねて凪はただずっとそこに立っていた
「今週で終わりかー……早いね。週末またどこか行く?」
「じゃあ良かったらまたショッピング付き合ってもらえる? 夏用の服が足りなくて」
「……っ」
美和の言葉に、凪も龍青もぐっと息を詰める
‘また’
彼女は確かにそう言った