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よくある恋愛モノ 〜見えない心〜
第8章 夜明け
ずっと、見て見ぬふりをしてきた
電話帳に入った唯一見覚えのない名前
何度も何度も両親に確認された名前
メールフォルダは開く気になれなかった
何か、自分の嫌な部分を思い出してしまいそうで、怖くて−−−
「……」
暗く、涼しくなってきた誰もいない公園
街灯に照らされたベンチに座りながら美和は辺りを見回した
真ん中に置かれたジャングルジム
何度も降りては上った滑り台
小さい頃よく遊んだ
「あのブランコ……」
昔自分の不注意で誰かが漕いでいる前を通ってしまい、その子の足が頭にぶつかった
大泣きする彼女に駆け寄って“いたいのいたいのとんでけ!”と言ってくれたのは誰だったろう
誰だったのだろう−−−
「美和」
不意に後ろから声をかけられ、美和は驚いて振り返る
「来ないで……」
目の前の自分に怯える美和に哀しく笑いながら、凪は彼女の隣に腰掛けて彼女がそうしていたように辺りを見渡した
「……懐かしいな」
「え?」
「昔、よく遊んだ」
彼の言葉に美和は俯いたまま何も言わなかった