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桜の季節が巡っても~追憶~
第55章 出発前の甘い夜2(再編中)
全然、捨てたものじゃない。
自分の人生、悪いものじゃない。
彼女と出逢い、自分の世界は一変した。
今は遠く離れているけれど。
毎日満たされて。
嬉しくて。
心躍って。
切なくて。
愛おしくて。
自分を想ってくれる誰がひとりいるだけで、こんなにも満ち足りた気持ちになれる。
それがどんなものにも勝る幸せなのだと、この年にして初めて知った。
手を繋ぐ事も。
抱き合う事も。
彼女とならどんな事でも喜ばしいけれど。
互いの唇を重ね合うこのひとときも、堪らなく好きだった。
彼女の吐息を。
香りを。
温もりを。
これ以上ないくらい身近に感じ。
ふたりでお互いを心ゆくまで貪る、甘美な時間《とき》-。
「ん…しゅう」
離れた直前。
悩ましげな息を吐《つ》かれ、正直な身体の部分が脈打ち、疼く。
どう呼んでもらっても構わない。
だけど名前を口にされるのは、やはり特別な意味を持つ。
彼女の唯一無二だと。
たったひとりの存在になれたと、より実感出来るから-。
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