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桜の季節が巡っても~追憶~
第56章 ふたりとも好き1(再編済)
自分の相手として恥ずかしいから口に出来ないのでは、当然ない。
自分には勿体ないくらいのひとで。
誰にだって自慢して回りたいくらいのひとだ。
でも万が一にも、誤解されたくない思いがあった。
初めて出逢った三年前は、大学の准教授と学生の関係で。
『好き』なんて口にする事すら憚られた。
先生と学生の関係だったのは一年間。
それをたったと思うのか、それとも十分だったと感じるのか-自分は前者だった。
想いも伝えられず。
色好い何かを言ってもらえた事も。
ましてや、名を呼んでもらうだなんて。
大学を去る際も、たったのひとことすらなかった。
連絡先を教えてもらう事もなく、そこで終わるはずの恋だった。
運命に導かれるようにあの日偶然、再会しなければ。
『好き』とようやく言えて。
『好きだ』と言われて。
やっと想いが通じたのは、最初の出逢いから三年の月日が経った頃。
名前を呼んでもらって。
その腕に抱き締めてもらい。
キスを交わしたのは、三年目の春が初めてだった。
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