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桜の季節が巡っても~追憶~
第56章 ふたりとも好き1(再編済)
「有栖川先生…ひょっとして日本に帰って来たの?」
「あ…うん。正しくは帰って来てた、だけど」
こうなってしまっては、もうどうしようもない。
大樹の問いに、泉夏は言い淀みつつも正直に伝える。
「またアメリカに行っちゃったけどね。週末、帰って来てたの」
そうなんだ-大樹は呟き、やがて微かに笑った。
「先生に久々に会えて良かったじゃん、流川。…有栖川先生、元気だった?」
「うん。元気だったよ」
「そっか。俺も久し振りに会いたかったな」
その微笑みに、泉夏の胸はちくんと痛む。
『会いたかった』-それがどれほどの真実を含んでいるかは、定かじゃないけれど。
その言葉を発してくれる優しさに救われる。
こんなにもいいひとを選べなかった-やるせない思いが込み上げる。
選べるのはひとりだけ。
先生にして後悔しているのではない。
先生で良かった。
先生で幸せ。
でも大樹にしろ、龍貴にしろ-自分には勿体なさ過ぎる人達で。
何度考えたってどうしようもないけれど-時折、堂々巡りする。
なんで、選ばなかったのだろう。
なんで、選べなかったのだろう-。
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