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桜の季節が巡っても~追憶~
第59章 決断と独占の果て1(再編中)
「『俺が先だ』って-」
-そう言ったはずだ。
窘める口調とは裏腹に、その声音には真逆の感情が含まれていた。
柔らかで温かな身体は、夢でも空想の世界のものでもない。
生身の人間に触れ合えば『どちらが先か』なんて、最早『些細な主張』だった。
五カ月振りの抱擁は、呼吸さえも忘れさせてしまう。
押し寄せる切なさと息苦しさに堪えるように、その肢体を抱き止める。
自らの胸に頬を寄せるその姿は、ただただ愛おしかった。
「先生、お帰りなさい」
「…うん」
「飛行機、予定通りの時間に着いて良かったね」
「うん」
「空港からすぐにこっちに来てくれたけど…疲れてない?」
「うん」
「先生さっきから『うん』ばっかり」
弾けるような笑い声と共に指摘され、ようやく喜びを噛み締める余裕が生まれてくる。
「泉夏に逢えたらこれを言おう、あれを言おうって、それは色んな事を考えてきたんだけど。泉夏の顔を見たら嬉し過ぎて、久し振りだから緊張もして…一遍に全部吹き飛んだ。まだ何分も経っていないのに、この先が思いやられる」
秀王は自嘲する。
でも今日ばかりは自分の腕に収まる彼女に救われ、それほど自己嫌悪に陥らずに済みそうだった。
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