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奥手なオークが貞操の危機!?
第1章 1
果物を詰め込んだ紙袋を抱えて入ってきたアリシアは、背中を向け合った男女の姿をみて首をかしげた。
「なにをしていますの?」
ベオはダラダラと冷や汗を流す。
「べ、別に何も……なあ、アーニャ?」
「そ、そうだな、まだ何もしていないぞ」
「ふうん、『まだ』?」
テーブルに買い物の袋を無造作に下ろしながら、アリシアはベオの表情をじっとうかがっていた。
「だいたい、なんでスーツなんか着ていますの?」
「そ、それはだな……お前に……」
告白の言葉を口にしようとして、ついうっかり、ベオはアーニャの顔をみてしまった。
(ねえ、言っちゃうの?)
不安げにゆれる瞳がそう訴えかけている。
「う……あ……」
言葉を失ったベオに、アリシアは不信のまなざしを向けた。
「なに? どうしましたの?」
「いや、その……」
「ふうん?」
賢いアリシアは、全てお見通しなのかもしれない。ベオの顔からすっと視線を外して、何事もなかったかのように紙袋の中身を漁り始めたのだから。
「りんごとオレンジしか買ってこなかったんだけど、どちらを食べます?」
あまりにも何事もない、ごく当たり前の態度……
むしろ、ベオとアーニャはこれに焦れた。
「ねえっ、気になんないの?」
先に声をあげたのはアーニャのほうで。
「男の人が、わざわざスーツまで着て、わっざわざ部屋までたずねてきてるんだよ、気になんないのっ?」
これに対してもアリシアはわずかに口の端をあげて、涼やかに笑って見せただけである。
「気にはなりますけど、意味があることだとは思えませんわ」
「う~! ベオ君はね、君に愛の告白をするつもりでここに来た、それを聞いてもかい?」
「それこそ、興味ありませんわね」
「どうして!」
「どうしてって……アーニャちゃん、あなた、自分の立場はわかってる?」
「う……」
「あなたは女騎士で、彼はオーク。同じように私はエルフで、彼はオーク。ね、叶うわけがない恋なのよ、これは」
この言葉には、ベオが反論の声をあげた。
「そんなの、世の中には異種族同士のカップルなんていくらでもいるじゃないか」
「それは、あなたが都会育ちだからそう言えるんじゃないかしら? 田舎に行けば、きちんと住み分けがなされているわよ」
「た、確かに……」
養父母に引き取られるまで彼が暮らしたオークの村には、オーク以外の種族はいなかった。
「なにをしていますの?」
ベオはダラダラと冷や汗を流す。
「べ、別に何も……なあ、アーニャ?」
「そ、そうだな、まだ何もしていないぞ」
「ふうん、『まだ』?」
テーブルに買い物の袋を無造作に下ろしながら、アリシアはベオの表情をじっとうかがっていた。
「だいたい、なんでスーツなんか着ていますの?」
「そ、それはだな……お前に……」
告白の言葉を口にしようとして、ついうっかり、ベオはアーニャの顔をみてしまった。
(ねえ、言っちゃうの?)
不安げにゆれる瞳がそう訴えかけている。
「う……あ……」
言葉を失ったベオに、アリシアは不信のまなざしを向けた。
「なに? どうしましたの?」
「いや、その……」
「ふうん?」
賢いアリシアは、全てお見通しなのかもしれない。ベオの顔からすっと視線を外して、何事もなかったかのように紙袋の中身を漁り始めたのだから。
「りんごとオレンジしか買ってこなかったんだけど、どちらを食べます?」
あまりにも何事もない、ごく当たり前の態度……
むしろ、ベオとアーニャはこれに焦れた。
「ねえっ、気になんないの?」
先に声をあげたのはアーニャのほうで。
「男の人が、わざわざスーツまで着て、わっざわざ部屋までたずねてきてるんだよ、気になんないのっ?」
これに対してもアリシアはわずかに口の端をあげて、涼やかに笑って見せただけである。
「気にはなりますけど、意味があることだとは思えませんわ」
「う~! ベオ君はね、君に愛の告白をするつもりでここに来た、それを聞いてもかい?」
「それこそ、興味ありませんわね」
「どうして!」
「どうしてって……アーニャちゃん、あなた、自分の立場はわかってる?」
「う……」
「あなたは女騎士で、彼はオーク。同じように私はエルフで、彼はオーク。ね、叶うわけがない恋なのよ、これは」
この言葉には、ベオが反論の声をあげた。
「そんなの、世の中には異種族同士のカップルなんていくらでもいるじゃないか」
「それは、あなたが都会育ちだからそう言えるんじゃないかしら? 田舎に行けば、きちんと住み分けがなされているわよ」
「た、確かに……」
養父母に引き取られるまで彼が暮らしたオークの村には、オーク以外の種族はいなかった。