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奥手なオークが貞操の危機!?
第1章 1
「くっ、殺せ」
しかしその両頬は愛くるしいバラのように紅潮し、どうみても未知の快楽に期待と恥じらいを寄せる乙女にしか見えない。
「どうした? さっさと殺せ」
「そんなこと、できるわけがないでしょうが」
「では、拷問だな!」
「そんなこともしないから。あのさあ、女騎士さんはさあ……」
「貴様! その汚い口で神聖な私の役職を汚すな! せめて……その……」
彼女は少し身をくねらせて、恥ずかしげにつぶやいた。
「アーニャって……呼んで」
「じゃあ、アーニャ……」
「はぁい♡」
くるりと首を戻してベオを見上げた彼女は、彼の頬にわずかに残る輪図かな涙の後を聡く見て取った。
「ないて……たの?」
不安そうな表情と声音、そして差し出された手が獣のような頬を優しくなでる。
「し、しかたない、今日はこのくらいで勘弁してやろう」
彼女はベオの体を突き飛ばし、素早く体を起こして腕を組んだ。
「ないて命乞いするものの命を奪うなど騎士道に反する。しかし、次はないからな、覚悟しておくがよい」
「いや、別に命乞いのためにないていたわけじゃないんだけど?」
「そんなことはわかっている。しかし、私はお前の泣き顔は嫌いだ」
「え?」
女騎士は大きくきびすを反し、その表情をベオから遠ざけてしまった。
「だ、だから、笑っているあなたの方が好きだっていう、そういう意味よ」
「はい?」
「ふふふふふ、聞こえなかったのならかまわない。次は笑顔であいまみえようぞ!」
カチャカチャと甲冑を鳴らして走り去る小さな背中を見送って、ベオは小さなため息をついた。
「まったく、みんなして……俺がオークだからなんだっていうんだよ」
またひとつ、ポロリと涙をこぼして立ち上がる。
「俺をそんじょそこらのオークと一緒にしやがって……」
誰もいない廊下に響く彼の泣き言は、ひどく無意味な者のように思えた。
なぜなら彼は緑がかった肌に獣のような毛を生やした、豚鼻のオークなのだから。どこからどうみてもまごうことなきオークなのだから……
しかしその両頬は愛くるしいバラのように紅潮し、どうみても未知の快楽に期待と恥じらいを寄せる乙女にしか見えない。
「どうした? さっさと殺せ」
「そんなこと、できるわけがないでしょうが」
「では、拷問だな!」
「そんなこともしないから。あのさあ、女騎士さんはさあ……」
「貴様! その汚い口で神聖な私の役職を汚すな! せめて……その……」
彼女は少し身をくねらせて、恥ずかしげにつぶやいた。
「アーニャって……呼んで」
「じゃあ、アーニャ……」
「はぁい♡」
くるりと首を戻してベオを見上げた彼女は、彼の頬にわずかに残る輪図かな涙の後を聡く見て取った。
「ないて……たの?」
不安そうな表情と声音、そして差し出された手が獣のような頬を優しくなでる。
「し、しかたない、今日はこのくらいで勘弁してやろう」
彼女はベオの体を突き飛ばし、素早く体を起こして腕を組んだ。
「ないて命乞いするものの命を奪うなど騎士道に反する。しかし、次はないからな、覚悟しておくがよい」
「いや、別に命乞いのためにないていたわけじゃないんだけど?」
「そんなことはわかっている。しかし、私はお前の泣き顔は嫌いだ」
「え?」
女騎士は大きくきびすを反し、その表情をベオから遠ざけてしまった。
「だ、だから、笑っているあなたの方が好きだっていう、そういう意味よ」
「はい?」
「ふふふふふ、聞こえなかったのならかまわない。次は笑顔であいまみえようぞ!」
カチャカチャと甲冑を鳴らして走り去る小さな背中を見送って、ベオは小さなため息をついた。
「まったく、みんなして……俺がオークだからなんだっていうんだよ」
またひとつ、ポロリと涙をこぼして立ち上がる。
「俺をそんじょそこらのオークと一緒にしやがって……」
誰もいない廊下に響く彼の泣き言は、ひどく無意味な者のように思えた。
なぜなら彼は緑がかった肌に獣のような毛を生やした、豚鼻のオークなのだから。どこからどうみてもまごうことなきオークなのだから……