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溺愛〜あたしだけの王子様〜
第2章 後編
―――ダメだわ。

宏樹はもう、
妄想と現実の区別がつかなくなっちゃってる。


『……そう……
そんな風に思ってくれてたの』


だからあたしも乗っかることにした。


「うん!
毎日寝顔を見てさぁ、
朝起こしてさ。
2人でそうやって暮らしていくんだ………」


『楽しみね』


「………碧さんもそう思うでしょ?!
楽しいよ、絶対!
もう…もう碧さんがあんな嫌がらせをしたり、
犯罪者になることもないんだしさ!別の男とホテルに行かなくても良いんだ」


『…………は?………………………』


「調べたよ、ぜんぶ。

豚の脳ミソの送付先は時人くんの同級生宅。

あの日、私立学園に爆破予告があったよね?
あれも郵便で出したの俺でしょ?投函した封筒だよね。

急に郵便の頼まれ事が増えたから疑問に感じて、
碧さんの後を着けてたんだ。変装みたいに黒い服を着て、どこに行くのかと思ったら……。
それに、慈庵のあんなジジィともやらしいことをしてるなんてっ………!」



――――まさか。
バレていたなんて……………………


バレていたなんて。

あたしは手が震えた。

「………旦那さんとの生活に不満があるから、
あんなことをするんだ。
俺と暮らせば、
あんなことをしなくて済むよ」



『………そうね………』
あたしはぼんやりと呟いた。



周囲の景色が山間部に入って抜けた。


街が広がっている。
街といっても、ログハウスやら白木の家など別荘らしき建物ばかり並んでいる。
「さぁ、
着きましたよ〜」
運転手はフゥと息を吐いて停車した。


あたしはバッグを手に、運転手に包みから札束を取って手渡した。
目を丸くする運転手に、
『取っておいて下さい』と微笑んだ。

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