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溺愛〜あたしだけの王子様〜
第3章 溺愛


「ママぁ!
いってきまーす」


『はーい、気をつけてね〜〜〜♪』
朝7時。時人がマンションの玄関から元気よく出ていく。

「おーおー、時人転ぶなよぉ〜。」
たーくんは今日の出社は少し遅め。
リビングから時人を冷やかすように声を飛ばした。

「転ばないよー!」
マンションの外から、時人の大声が返ってきた。

「はは、聞こえてたか(笑)
――――あ。碧、この人知り合いだろ?」



リビングのテレビ画面では、
自殺の報道が映っている。
東京郊外の有名な避暑地にて、若い男性の遺体が発見されたらしい。
検死の結果、自殺と断定。遺書があったそうた。リポーターが懸命に若者の自殺問題について語っていた。
『ああ……
宏樹くんねぇ………
凄く真面目な良い子だったのに。
何があったのかしら?』



「お得意様だもんな、碧。確かあの精肉店、家族経営でお母さんと母子2人だったんだろ?閉店するらしいって部下が噂してたぞ?」


『えっ…………
そうなの?
…………かやはらさん、あたしお見舞いに通おうかしら……奥さまが心配だわ』


「そこまでしなくても良いんじゃないのか?
しかし、最近の若い奴らは直ぐ自殺するよなぁ?何があっても乗り越えてかなきゃなぁ。いちいち死んでたら体が幾つあっても足りないよ(苦笑)」
たーくんはワイシャツの襟を立て、ネクタイを廻してシュッと結ぶ。


『………そうよねぇ……
何があったか分からないけど、
死ななくていいのにね』
あたしはたーくんのネクタイに手を伸ばしてキュッと結んだ。




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