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溺愛〜あたしだけの王子様〜
第1章 前編
あたしは『いつもお野菜を頂いてしまって、
本当に助かっております』と礼を言い実家のアメジストのブレスレットを差し出した。


「そんな、
こんな良い品いただけないわ!」と言う女性にあたしは『そうですか……
なら、せめて菜園の力仕事を手伝わせて下さいな』と申し出た。


「そぉ?
じゃあ………スコップで苗を植える穴を掘ってもらえる?」
60代女性は何だかんだで腰や膝が痛いらしい。



―――あたしは、
『いつもお野菜美味しくて……
人参はすりおろして生で食べてます』とおべっかを忘れずに、
土いじりをしながら出てきたミミズをポケットのビニール袋に詰め込んだ。





女性は「助かるわぁ、
主人は退職してから毎日ゴルフだし…息子夫婦は鹿児島でしょ?他に誰も居ないからたまにしんどくて………
菜園もわりと体使うのよねぇ」
と玉汗を拭きながらあたしに礼を述べた。



礼を言うのはあたしなのに。


自宅はマンションだし、
ママ友には〔万が一〕があるから庭いじりなんて頼めない。


あたしはツバの広い帽子にパンツスタイルで、
スニーカーを履いて女性宅を訪問した。


最初から狙いはミミズ。


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