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溺愛〜あたしだけの王子様〜
第1章 前編
あたしは手早く具材を混ぜてチーズを振り、

オーブンにセットした。



携帯を持ち、
近所のカフェにTELをした。
「はい。カフェ慈庵でございます」


じあん、というカフェは添加物を使用しないスイーツばかり出すから人気がある。

『もしもし……。
いつもお世話になっております、早川でございますが』

「ああ、碧さん!
いつもご贔屓下さりありがとうございます」
パティシエ・高内【タカウチ】の野太い声がした。



『あのぅ……お願いがあるんですけどぉ、
プリンを至急3つ作って頂きたいのです……』
あたしは遠慮がちに頼む。


高内は一瞬無言になった。

あたしは『お願いします!』と畳み掛ける。


「分かりました。碧さんの頼みですしね……
では、今日のぶんはどうされます?」

高内が交渉に入る。


『そうですね……
午前中の3時間なら。
9時?ええ、もちろんOKですわ♪♪』
あたしは交渉が成立したことにホッとして『では、お願いしますね?はい、
そのときに取りに伺います』
と言いTELを切る。





そして、
違う店にTELをした。
「はい、〔かやはら〕でございます」
精肉店の女主人の声がする。

『あ、おはようございます♪
早川でございますが〜。』


〔かやはら〕は国産肉を加工・販売している精肉店だ。
【日本が誇る安心・安全美味い食材】という雑誌の特集に掲載されたほど。

「……あら、早川さま?」女主人の声が低くなった。

『あのぉ、
チキンナゲットを作ってもらえないでしょうか??』

「今からかしら?」
女主人は淡々と話す。

『はい、申し訳ありませんけど……
もちろん〔あれ〕は今日中に届けますので』
あたしは遠慮がちさを心がけて、いつもと同じように約束をする。


女主人は「まぁ、本日中に?分かりました、チキンナゲットね?
6人分作りますわ」と声が明るくなる。
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