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溺愛〜あたしだけの王子様〜
第2章 後編
すれ違いさまに『あっ』
と文庫本を落とす。



杏南はびっくりした顔で振り返った。



そして、
タタッと素早く本を拾いあたしに手渡した。
『どうぞ!』


あたしは『――ありがとう』と声を低めに返す。


『あの……友達の家を探してるんだけど、
この辺り知らなくて。
教えてもらえないかな?』
あたしが言うと、
杏南は一瞬警戒した表情になった。



親からも学園からも「知らない人に安易についていかないように」
と再三注意されているのだろう。


『あっ……
ごめんね、怪しいよね。
自分で探すよ。
本拾ってくれてどうもありがとう』
あたしは遠慮がちに言い、去る。


すると……


『あのーぅ、
誰のお宅を探してるんですか?』
杏南から一緒に探そうとしてきた。


やった。
目論見通りだわ。
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