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凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】 二
我に返った瞬間、土間に見知らぬ男の骸(むくろ)が転がっているのが見え、お絹は悲鳴を上げた。月明かりに浮かび上がった死体は胸からおびただしい量の血を流して事切れていた。胸にはまだ匕首が突き立てられたままだ。まさに心ノ臓を一突き、吉之助は聞きしに勝る手練れのようであった。
「お前は見ない方が良い」
ふいに声が降ってきて、お絹は座り込んだまま茫然と吉之助を見上げた。吉之助も大量の返り血を浴びている。左頬の傷痕が月光に照らし出され、凄絶なまでの美しさがいっそう際立っている。
改めて自分がたった今直面したばかりの怖ろしさが身に滲みた。身体が小刻みに慄え出し、涙がとめどなく溢れて落ちる。
「お前は見ない方が良い」
ふいに声が降ってきて、お絹は座り込んだまま茫然と吉之助を見上げた。吉之助も大量の返り血を浴びている。左頬の傷痕が月光に照らし出され、凄絶なまでの美しさがいっそう際立っている。
改めて自分がたった今直面したばかりの怖ろしさが身に滲みた。身体が小刻みに慄え出し、涙がとめどなく溢れて落ちる。