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凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】 二
声を上げる暇(いとま)もなかった。黒い塊が鮮やかな速さでお絹に飛びかかってきた。夏の陽光に鈍く光る白刃が見えた。それが自分に向かって振り降ろされるのを、お絹は茫然と惚けたように見ていた。一体、これが現実なのかも定かではなかったが、我に返った刹那、懐から鈴を取り出して夢中で鳴らした。
吉之助から与えられた赤い鈴だ。無我夢中で鈴を振ると、チリチリとその場には不似合いなほど愛らしい音を奏でる。お絹は半狂乱になって鈴を振り続けた。
刃がお絹に達する寸前、お絹の身体は何者かにすっぽりと抱き込まれた。お絹はハッと我に返った。気が付いたときには、吉之助の腕の中にいた。吉之助はお絹の身体を全身で庇うように腕の中にしっかりと抱き込んでいた。
吉之助から与えられた赤い鈴だ。無我夢中で鈴を振ると、チリチリとその場には不似合いなほど愛らしい音を奏でる。お絹は半狂乱になって鈴を振り続けた。
刃がお絹に達する寸前、お絹の身体は何者かにすっぽりと抱き込まれた。お絹はハッと我に返った。気が付いたときには、吉之助の腕の中にいた。吉之助はお絹の身体を全身で庇うように腕の中にしっかりと抱き込んでいた。