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凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】 二
「吉之助さん―」
お絹は吉之助の名を呟いた。
「来たぜ、約束だからな」
吉之助がニヤリと口の端を引き上げた。お絹がよく見た暗い微笑ではなかった。
「お前はどいてろ」
吉之助はお絹の身体を脇へ押しやった。
お絹を狙おうとした黒い影が鳥のような素早さで逃げてゆく。吉之助はその後を追った。
狭い道沿いは樹や生い茂った夏草に覆われている。影を追った吉之助の後ろ姿が道脇の生い茂った茂みの中に吸い込まれた。お絹はその光景を固唾を飲んで見守っていた。
吉之助の身が案じられた。
ほどなく、ギャーという凄まじい絶叫が辺りに響き渡った。お絹の中で警鐘が鳴った。
お絹は吉之助の名を呟いた。
「来たぜ、約束だからな」
吉之助がニヤリと口の端を引き上げた。お絹がよく見た暗い微笑ではなかった。
「お前はどいてろ」
吉之助はお絹の身体を脇へ押しやった。
お絹を狙おうとした黒い影が鳥のような素早さで逃げてゆく。吉之助はその後を追った。
狭い道沿いは樹や生い茂った夏草に覆われている。影を追った吉之助の後ろ姿が道脇の生い茂った茂みの中に吸い込まれた。お絹はその光景を固唾を飲んで見守っていた。
吉之助の身が案じられた。
ほどなく、ギャーという凄まじい絶叫が辺りに響き渡った。お絹の中で警鐘が鳴った。