この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】 二
吉之助の無事な姿が茂みをかき分けて現れた時、お絹はホッとして涙が出そうになった。
吉之助は血糊のついた匕首を握りしめていた。返り血が吉之助の着流しの裾を朱に染めている。なまじ整った男前だけに、迫力がある。その凄惨な姿に、お絹は息を呑んだ。
「吉之助さん」
―無事で良かった。
言おうとして、お絹は愕然とした。お絹の手前まで歩いてきた吉之助が薄く笑った瞬間、ドサリと音を立てて倒れたのだ!
乾いた土がわずかに砂埃を上げ、お絹は悲鳴を上げた。
「吉之助さんッ」
傍に駆け寄ると、吉之助の異変に初めて気付いた。吉之助の背中には深々と匕首が刺さっていた。刃は深く吉之助の心ノ臓にまで達しているようだ。
吉之助は血糊のついた匕首を握りしめていた。返り血が吉之助の着流しの裾を朱に染めている。なまじ整った男前だけに、迫力がある。その凄惨な姿に、お絹は息を呑んだ。
「吉之助さん」
―無事で良かった。
言おうとして、お絹は愕然とした。お絹の手前まで歩いてきた吉之助が薄く笑った瞬間、ドサリと音を立てて倒れたのだ!
乾いた土がわずかに砂埃を上げ、お絹は悲鳴を上げた。
「吉之助さんッ」
傍に駆け寄ると、吉之助の異変に初めて気付いた。吉之助の背中には深々と匕首が刺さっていた。刃は深く吉之助の心ノ臓にまで達しているようだ。