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凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】 二
その眼はどこまでも真剣だ。お絹は吉之助の眼を見返しながら、深く頷いた。
その時、吉之助が烈しく咳き込み、血を吐いた。お絹は最早、眼の前の男の生命が長くはないことを知った。
荒い息を繰り返す吉之助の手を慄えながら手に取って、自分の頬に押し当てた。吉之助が薄く笑う。
いつもの皮肉めいた笑いではなく、優しげだが淋しい笑いだった。
「死んじゃ駄目よ。お願いだから、死なないで」
お絹の眼から大粒の涙が流れる。
「腹の子を―ちゃんと育ててやってくれ」
そう言うと、吉之助はまた血を少し吐いた。
じっと見つめる吉之助の視線とお絹の視線が絡み合った。その視線を、お絹は受け止めた。
その時、吉之助が烈しく咳き込み、血を吐いた。お絹は最早、眼の前の男の生命が長くはないことを知った。
荒い息を繰り返す吉之助の手を慄えながら手に取って、自分の頬に押し当てた。吉之助が薄く笑う。
いつもの皮肉めいた笑いではなく、優しげだが淋しい笑いだった。
「死んじゃ駄目よ。お願いだから、死なないで」
お絹の眼から大粒の涙が流れる。
「腹の子を―ちゃんと育ててやってくれ」
そう言うと、吉之助はまた血を少し吐いた。
じっと見つめる吉之助の視線とお絹の視線が絡み合った。その視線を、お絹は受け止めた。