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凍える月~吉之助の恋~
第1章 【第一話 凍える月~お絹と吉之助~】 一
あのときと変わらず、妖しいほどに美しい貌だ。こんな状況なのに、お絹はあまりの美しさに息を呑んで男を見つめていた。
まるで女性かと見紛うほどに艶(あで)やかで、それでいて、けして女性的ではない。
たとえるなら、冬の夜空に煌々と輝く蒼ざめた月のような―、そう、お絹がこの男を初めて見た夜、空に浮かんでいた、凍えた月のような冷たい美貌だ。
今は月明かりの中で見たときほど、左頬の無残な傷跡は目立たない。
男がお絹の方に向かってスと手を差し出した。
「何故、私をこんなところに連れてきたの?」
男の手がお絹の頬に触れそうになる寸前、お絹は身を退(ひ)いていた。男がフッと口許を歪める。皮肉げな笑いが美しい貌に浮かんだ。
「まァ、当然の疑問だろうな」
まるで女性かと見紛うほどに艶(あで)やかで、それでいて、けして女性的ではない。
たとえるなら、冬の夜空に煌々と輝く蒼ざめた月のような―、そう、お絹がこの男を初めて見た夜、空に浮かんでいた、凍えた月のような冷たい美貌だ。
今は月明かりの中で見たときほど、左頬の無残な傷跡は目立たない。
男がお絹の方に向かってスと手を差し出した。
「何故、私をこんなところに連れてきたの?」
男の手がお絹の頬に触れそうになる寸前、お絹は身を退(ひ)いていた。男がフッと口許を歪める。皮肉げな笑いが美しい貌に浮かんだ。
「まァ、当然の疑問だろうな」