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凍える月~吉之助の恋~
第6章 第二話 【鈴の音】  三
     三

 吉之助の死から数日後の早朝。
 お絹は一人、辻堂まで出掛けた。
 文月もそろそろ末である。月が変われば、八月は盆迎えになる。たった数日前に亡くなった吉之助もまた新仏として今年の盆を迎えることになる。
 そう考えると、哀しい気持ちになった。今日もあの日と変わらず蝉が忙しなく鳴いている。お絹の腹の赤ン坊は八ヶ月に入った。産み月まであと二月(ふたつき)である。たった一人で出産、子を育ててゆくことを思うと、心細さが押し寄せてくる。
 目ざめたばかりの鳥が高く囀りながら二羽、黒い影となって空をよぎっていった。
―鳥さえも帰るところがあるのに。
 我が身はこの世にたった一人ぼっちだ。
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