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凍える月~吉之助の恋~
第6章 第二話 【鈴の音】  三
 今更ながらに孤独をひしひしと感じ、お絹はじわりと熱いものが滲んだ。
 白い指先で眼尻に溜まった涙の雫を拭った時、腹の子が動いた。このところ、大きく成長しすぎて胎内が狭くなったのか、あまり動くこともなく、じっとしていることが多かったのだけれど、久々の大きな動きである。
―私は一人ではない!
 唐突に、そんな想いが湧き上がった。
 そう言えば、この子の懐妊が判った時、お絹は一度は死のうとまで追いつめられた。だが、産婆を訪ねての帰り道、初めての胎動を感じて思いとどまることができたのだ。
 まだこの世に生まれ落ちてもおらぬ我が子に慰められ励まされるのは、これが初めてではなかった。負うた子に浅瀬を教えられたような心地がする。この子のためにも逞しく生きなくてはと強く思った。
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