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凍える月~吉之助の恋~
第6章 第二話 【鈴の音】 三
伊八は既に真実を知ってしまった。ならば尚更お絹に何を言えるはずもない。何を言ったとて、言い訳めてしまうだろう。
だが、次の瞬間、伊八の口から紡ぎ出された言葉にお絹は我が耳を疑った。
「済まねえ。お前がそんなに悩んでいたとは少しも知らなかった。俺が気付いてやらねえばかりに、お前にまた辛い想いをさせちまった」
お絹は、とうとう耐えかねて嗚咽を洩らした。
「何で伊八っつぁんが謝るのよ。伊八っつぁんは何も悪くないじゃない」
お絹は泣きながら振り向いた。
「どうして、そんな風に優しいの?」
伊八はお絹の泣き顔に胸を突かれたような表情(かお)になった。
だが、次の瞬間、伊八の口から紡ぎ出された言葉にお絹は我が耳を疑った。
「済まねえ。お前がそんなに悩んでいたとは少しも知らなかった。俺が気付いてやらねえばかりに、お前にまた辛い想いをさせちまった」
お絹は、とうとう耐えかねて嗚咽を洩らした。
「何で伊八っつぁんが謝るのよ。伊八っつぁんは何も悪くないじゃない」
お絹は泣きながら振り向いた。
「どうして、そんな風に優しいの?」
伊八はお絹の泣き顔に胸を突かれたような表情(かお)になった。