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凍える月~吉之助の恋~
第6章 第二話 【鈴の音】 三
近くの民家で蚊遣りを炊いているのか、松や杉の青葉を燻す匂いが漂ってくる。
「お絹」
伊八に抱き寄せられても、お絹は抗わなかった。懐かしい温もりと匂いに包まれ、お絹は泣いた。
「吉之助さんが死んだのよ。私のために―、私の身代わりになって死んだの。以蔵が差し向けた刺客がこの村まで追ってきて、私を殺そうとしたの。それで吉之助さんが」
涙声で言った。
吉之助にとって、以蔵はたとえ「蠍」と呼ばれていても、よしんば喜作と伊八との間のように情愛がない繋がりだとしても、生命の恩人だった。その以蔵を吉之助は最後の最後で裏切ったのだ。
「お絹」
伊八に抱き寄せられても、お絹は抗わなかった。懐かしい温もりと匂いに包まれ、お絹は泣いた。
「吉之助さんが死んだのよ。私のために―、私の身代わりになって死んだの。以蔵が差し向けた刺客がこの村まで追ってきて、私を殺そうとしたの。それで吉之助さんが」
涙声で言った。
吉之助にとって、以蔵はたとえ「蠍」と呼ばれていても、よしんば喜作と伊八との間のように情愛がない繋がりだとしても、生命の恩人だった。その以蔵を吉之助は最後の最後で裏切ったのだ。