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凍える月~吉之助の恋~
第7章 第三話 【初戀】 一
一
吐く息が白い。空気がピンと張りつめ、冬独特の冷気を含んでいた。ふいに身の傍(そば)を吹き抜けた木枯らしに、お絹は身を震わせた。
空を見上げれば、低く頭上まで垂れ込めた空が不気味なほどの暗い色を滲ませている。
クシュンと小さなくしゃみの音が背中で聞こえ、お絹は慌てて背に括りつけた赤ン坊を揺すり上げた。
今年の江戸は霜月になっても、いっかな寒くはならなかった。朝夕こそ少しは冷えるようになったものの、日中は汗ばむほどの陽気だ。それが中旬も過ぎ末になってくると、流石に冬らしい気候になってきた。殊に二、三日前辺りから気温が下がってきたかと思っていたら、あれよあれよという間に昼前でさえ綿入れが欲しいと思うほどの寒さだ。
吐く息が白い。空気がピンと張りつめ、冬独特の冷気を含んでいた。ふいに身の傍(そば)を吹き抜けた木枯らしに、お絹は身を震わせた。
空を見上げれば、低く頭上まで垂れ込めた空が不気味なほどの暗い色を滲ませている。
クシュンと小さなくしゃみの音が背中で聞こえ、お絹は慌てて背に括りつけた赤ン坊を揺すり上げた。
今年の江戸は霜月になっても、いっかな寒くはならなかった。朝夕こそ少しは冷えるようになったものの、日中は汗ばむほどの陽気だ。それが中旬も過ぎ末になってくると、流石に冬らしい気候になってきた。殊に二、三日前辺りから気温が下がってきたかと思っていたら、あれよあれよという間に昼前でさえ綿入れが欲しいと思うほどの寒さだ。