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凍える月~吉之助の恋~
第7章 第三話 【初戀】 一
むろん、お絹もその例に洩れず、いつも良人を心配ばかりさせている。伊八とお絹の間にはこの秋、娘が生まれたばかりだ。お彩(さい)と名づけたこの赤ン坊を伊八はそれこそ眼に入れても痛くないほど可愛がっている。が、実はこのお彩の出生には複雑な事情がある。
お彩は伊八の種ではない。もう一年近くも前になるが、お絹は吉之助(よしのすけ)という男に突然拉致され、手込めにされた。お彩はその吉之助の子なのだ。だが、伊八はお彩を身籠もったお絹と所帯を持ち、生まれてきたお彩を実の子として慈しみ育てている。
再び小さなくしゃみが聞こえ、お絹は背中の赤子に話しかけた。
「やっぱり寒いのかしらねえ?」
お彩は伊八の種ではない。もう一年近くも前になるが、お絹は吉之助(よしのすけ)という男に突然拉致され、手込めにされた。お彩はその吉之助の子なのだ。だが、伊八はお彩を身籠もったお絹と所帯を持ち、生まれてきたお彩を実の子として慈しみ育てている。
再び小さなくしゃみが聞こえ、お絹は背中の赤子に話しかけた。
「やっぱり寒いのかしらねえ?」