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凍える月~吉之助の恋~
第7章 第三話 【初戀】 一
お絹は長屋の前の狭い道をゆっくりと歩いている。木戸番小屋の手前で止まると、大きな声で呼んだ。
「冨松(とみまつ)さん、焼き芋をちょうだい」
その声に奧から五十過ぎの爺さんが出てきた。木戸番の冨松である。木戸番小屋は文字通り長屋の木戸口にあり、木戸番は木戸の番人を務める。木戸は朝夕定時に開け閉めする。通行人の誰何(すいか)や夜間の見回りなどが主な仕事である。夜は起きていることが多いので、冨松は昼に仮眠を取る。
木戸番は副業で雑貨屋を営んでいることが多いが、冨松も小さな店をやっていた。ちり紙や手拭いといった日用品を扱い、冬には焼き芋も売る。主な客は長屋の住人であったが、昼間奧で眠っているときには表に小さな笊(ざる)が置いてある。客はその笊の中に代金を入れ、品物を持ち帰るのであった。
「冨松(とみまつ)さん、焼き芋をちょうだい」
その声に奧から五十過ぎの爺さんが出てきた。木戸番の冨松である。木戸番小屋は文字通り長屋の木戸口にあり、木戸番は木戸の番人を務める。木戸は朝夕定時に開け閉めする。通行人の誰何(すいか)や夜間の見回りなどが主な仕事である。夜は起きていることが多いので、冨松は昼に仮眠を取る。
木戸番は副業で雑貨屋を営んでいることが多いが、冨松も小さな店をやっていた。ちり紙や手拭いといった日用品を扱い、冬には焼き芋も売る。主な客は長屋の住人であったが、昼間奧で眠っているときには表に小さな笊(ざる)が置いてある。客はその笊の中に代金を入れ、品物を持ち帰るのであった。