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凍える月~吉之助の恋~
第7章 第三話 【初戀】 一
「そいつはありがてえ。何分、この歳だから、こう寒くなっちゃあ、あちこちが痛み出してたまらねえや」
 冨松は腰をさすりながら、ぼやいた。
「じゃあ、後で持ってくるわね」
 お絹が言うと、冨松は笑顔で頷いた。
 お絹は冨松に礼を言い、紙にくるんだ焼き芋を抱えて家に向かった。甚平店は長屋の建物が二つ向かい合っている。お絹の住まいは右側の棟の奧から二番目である。踵を返そうとしたその時、木戸口に人影を見つけて、お絹はつと振り向いた。
「陽ちゃん!?」
 お絹は声を上げた。木戸の側に佇んでいたのは、鋳掛け屋の太吉の倅陽太であった。背も伸びて、幾分大人びてはいたけれど、あれは間違いなく陽太だ。
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