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凍える月~吉之助の恋~
第1章 【第一話 凍える月~お絹と吉之助~】 一
お絹の中で閃くものがあった。去年の夏、伊八は蠍の以蔵の子分吉蔵の一味からの脱出を手助けしたことがあった。吉蔵の兄精治がお絹の店によく蕎麦を食べにくる常連で、伊八とは顔見知りでもあった。
吉蔵は十七で故郷の川越を飛び出し、江戸へ出てきた。川越にいた頃から身を持ち崩していた吉蔵は江戸で〝蠍〟と呼ばれる闇の世界の大元締以蔵の一味に入り、いかさま賭場の用心棒を務めていた。
精治は何とか弟を真っ当な道に連れ戻そうと吉蔵の後を追いかけて江戸へ来て、五年もの間風鈴売りをしながら吉蔵を探し歩いていたのである。が、吉蔵の行方は杳として知れず、途方に暮れた精治はお絹に相談した。
そして、お絹から話を聞いた伊八が兄弟のためにひと肌脱いだのだ。
吉蔵は十七で故郷の川越を飛び出し、江戸へ出てきた。川越にいた頃から身を持ち崩していた吉蔵は江戸で〝蠍〟と呼ばれる闇の世界の大元締以蔵の一味に入り、いかさま賭場の用心棒を務めていた。
精治は何とか弟を真っ当な道に連れ戻そうと吉蔵の後を追いかけて江戸へ来て、五年もの間風鈴売りをしながら吉蔵を探し歩いていたのである。が、吉蔵の行方は杳として知れず、途方に暮れた精治はお絹に相談した。
そして、お絹から話を聞いた伊八が兄弟のためにひと肌脱いだのだ。