この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第7章 第三話 【初戀】 一
が、伊八はおかねの言葉なぞ頓着せずに号泣した。あの涙をお絹は生涯忘れないだろう。あの時、伊八の胸の中には様々な感情が去来していたに相違ない。お彩がお絹の中に芽生え、無事この世に生まれいずるまでの幾多の出来事、それはむしろ困難と哀しみの連続であった。
お彩は生まれながらに、真の父の顔を知らない。
―俺がお前のおとっつぁんだぞ。
生まれたばかりの赤子は真っ赤でしわくちゃだらけだ。伊八が話しかけても、元気な声で顔を真っ赤にして泣き喚くばかりである。が、その赤子に言い聞かせるように呟く伊八の頬は濡れていた。
お彩は生まれながらに、真の父の顔を知らない。
―俺がお前のおとっつぁんだぞ。
生まれたばかりの赤子は真っ赤でしわくちゃだらけだ。伊八が話しかけても、元気な声で顔を真っ赤にして泣き喚くばかりである。が、その赤子に言い聞かせるように呟く伊八の頬は濡れていた。