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凍える月~吉之助の恋~
第7章 第三話 【初戀】 一
―この男性(ひと)といる限り、私は生きてゆける。
お絹は伊八の整った横顔を見ながら思った。今、愛する良人の側にいられる幸せをつくづと噛みしめる。この一年の間に起こった出来事を思えば、こうして生きて伊八の側にいられることそのものが奇蹟のような幸せだった。
お絹がそんな感慨に囚われていると、伊八がふと呟いた。
「そう言やァ、鋳掛け屋の倅が戻ってきているのを知ってるか?」
え、と、お絹は眼を見開いた。
やはり、夕方、木戸口で見かけたのは陽太に間違いなかったのだ。お絹は頷いた。
「夕方、木戸番小屋に焼き芋を買いにいったときに陽ちゃんらしい子を見かけたの。でも、京屋さんは奉公に上がって初めの一年は薮入りはないっていうほどの厳しいお店(たな)でしょう。まさか、年の瀬の忙しい時分にお暇を貰えるなんて思わなくて」
お絹は伊八の整った横顔を見ながら思った。今、愛する良人の側にいられる幸せをつくづと噛みしめる。この一年の間に起こった出来事を思えば、こうして生きて伊八の側にいられることそのものが奇蹟のような幸せだった。
お絹がそんな感慨に囚われていると、伊八がふと呟いた。
「そう言やァ、鋳掛け屋の倅が戻ってきているのを知ってるか?」
え、と、お絹は眼を見開いた。
やはり、夕方、木戸口で見かけたのは陽太に間違いなかったのだ。お絹は頷いた。
「夕方、木戸番小屋に焼き芋を買いにいったときに陽ちゃんらしい子を見かけたの。でも、京屋さんは奉公に上がって初めの一年は薮入りはないっていうほどの厳しいお店(たな)でしょう。まさか、年の瀬の忙しい時分にお暇を貰えるなんて思わなくて」