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凍える月~吉之助の恋~
第7章 第三話 【初戀】 一
 お絹は途中で口ごもった。
 冨松の店で買った焼き芋は伊八が二つ、お絹が一つ食べた。あれからほどなく伊八が帰ってきて、伊八はまだ白い湯気の立つ焼き芋を見て顔を綻ばせたものだ。
「それに、私の顔を見て、陽ちゃんが逃げたのよ」
 お絹は夕刻の一件―陽太らしい少年に声を掛けたところ、逃げるように走り去ったこと―を話した。
 伊八はうつむいて話を聞いていたが、やがて、顔を上げた。伊八と陽太に直接の面識はない。伊八が甚平店を初めて訪れたのは、陽太が京屋に奉公に出て後のことだ。だが、お絹は弟のように可愛がっている悪戯好きの少年のことを伊八にしばしば話していた。
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