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凍える月~吉之助の恋~
第7章 第三話 【初戀】 一
「実はな、陽太が奉公先から盗みの疑いをかけられてるらしいんだ」
伊八は低い声で言った。
「陽太の親父さんが今朝、いやに深刻な顔でいたもんで、具合でも悪いのかと訊いたら、倅が大変なことになっちまってと頭を抱えてたよ」
話好きのおみのとひょうきんで働き者の太吉はどちらもお人好しで似合いの夫婦だ。所帯を持って長らく子に恵まれず、十年目にやっと一粒種の陽太が生まれた。二人とも口ではやかましく言い厳しくしつけているが、内心は陽太が可愛いくてたまらないのだ。
おみの同様、普段は賑やかな太吉が沈んでいたとなると、かなり切羽詰まった状況なのかもしれない。
伊八は低い声で言った。
「陽太の親父さんが今朝、いやに深刻な顔でいたもんで、具合でも悪いのかと訊いたら、倅が大変なことになっちまってと頭を抱えてたよ」
話好きのおみのとひょうきんで働き者の太吉はどちらもお人好しで似合いの夫婦だ。所帯を持って長らく子に恵まれず、十年目にやっと一粒種の陽太が生まれた。二人とも口ではやかましく言い厳しくしつけているが、内心は陽太が可愛いくてたまらないのだ。
おみの同様、普段は賑やかな太吉が沈んでいたとなると、かなり切羽詰まった状況なのかもしれない。