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凍える月~吉之助の恋~
第7章 第三話 【初戀】 一
伊八が太吉から聞いたところによれば、京屋では毎夜、戸締まりをする前に主が店の金庫の鍵をかける。その際、その日の売上高を帳簿と照らし合わせ再確認するという。店の大戸を閉めるのは新参の丁稚の役目であり、今は陽太であった。丁稚は主が金庫の売上金を確かめ、その鍵を掛けるところまで付き従う。
むろん、陽太も毎夜、市兵衛の背後に控えている。事件が起こったのは三日前の朝だった。朝、金庫を開けた番頭が「金が足りない」と大騒ぎを始めたのだという。駆けつけた市兵衛が早速、計算したところ、確かに昨日市兵衛が番頭から報告を受けた売上高より二両足りなかった。
その前夜に限って、同業の寄合があって深川まで出掛けた市兵衛は泥酔して帰宅、番頭に金庫の鍵を掛けさせた。
むろん、陽太も毎夜、市兵衛の背後に控えている。事件が起こったのは三日前の朝だった。朝、金庫を開けた番頭が「金が足りない」と大騒ぎを始めたのだという。駆けつけた市兵衛が早速、計算したところ、確かに昨日市兵衛が番頭から報告を受けた売上高より二両足りなかった。
その前夜に限って、同業の寄合があって深川まで出掛けた市兵衛は泥酔して帰宅、番頭に金庫の鍵を掛けさせた。