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凍える月~吉之助の恋~
第7章 第三話 【初戀】 一
が、通いの番頭は三つになる倅が熱を出し寝込んでいたのが心配で、心ここにあらずだった。早く帰りたい一心で、売上高の計算と確認だけを済ませ市兵衛に告げると後は手代に鍵を掛けるように言いつけて、自分はいつもより早めに帰った。更に、その手代が夜遊びに出かけたいばかりに、丁稚の陽太に自分の代わりに金庫の鍵を掛けさせたのだ。
悪いときには悪いことが重なるもので、結局、その日最後に金庫の鍵を掛けた陽太に盗みの疑いがかけられたのだ。本来ならば、新参の丁稚が店の大事な金庫の鍵を掛けることなぞあり得ない話で、責めを負うべきは、きちんと上の者からの命を守らなかった番頭や手代のはずだ。
悪いときには悪いことが重なるもので、結局、その日最後に金庫の鍵を掛けた陽太に盗みの疑いがかけられたのだ。本来ならば、新参の丁稚が店の大事な金庫の鍵を掛けることなぞあり得ない話で、責めを負うべきは、きちんと上の者からの命を守らなかった番頭や手代のはずだ。