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凍える月~吉之助の恋~
第1章 【第一話 凍える月~お絹と吉之助~】 一
何しろ、裏の世界の大親分として江戸のならず者や極道どもから畏怖されている男だ。その情け容赦もない冷酷さから〝蠍〟と異名を取るほどなのだ。
一見、筋の通らぬことは大嫌いという一徹な職人にしか見えない喜作がどうして以蔵のような男とつながりがあるのか―、ただ裏の世界にも拘わりを持つからだという理由だけでは納得できないような気がする。
お絹はハッとした。
「あなたが以蔵なの!?」
が、その問いに、男は声を上げて笑った。
「冗談じゃない。俺は親分じゃねえ。まァ、影のようなものかな」
「影?」
お絹は眼を見開く。
男は恬淡として言った。
「どうやら吉蔵と精治は無事川越に辿り着いて、吉蔵は堅気に戻ったようだな」
一見、筋の通らぬことは大嫌いという一徹な職人にしか見えない喜作がどうして以蔵のような男とつながりがあるのか―、ただ裏の世界にも拘わりを持つからだという理由だけでは納得できないような気がする。
お絹はハッとした。
「あなたが以蔵なの!?」
が、その問いに、男は声を上げて笑った。
「冗談じゃない。俺は親分じゃねえ。まァ、影のようなものかな」
「影?」
お絹は眼を見開く。
男は恬淡として言った。
「どうやら吉蔵と精治は無事川越に辿り着いて、吉蔵は堅気に戻ったようだな」