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凍える月~吉之助の恋~
第8章 第三話 【初戀】 二 
 背後に人の気配を感じ、お絹は振り返った。
「陽ちゃん」
 お絹は痛ましい想いで陽太を見つめた。
 ふっくらとした頬はここ十ヶ月ほど見ない間にそげ、痩せたせいか眼が鋭くなっていた。全体的に子どもらしさがなくなり、その分、分別のある大人びた印象を与えるようにはなっていたが―、表情からも明るさは失われていた。
「俺のこと、聞いたのか」
 陽太が暗い眼をして言った。何故か、お絹の家にひからびた蛙やヤモリを放り込んだりと悪戯ばかりを仕掛けてくるガキ大将だった。それが少年期特有の好きな異性に対する照れの裏返しによるものだとは本人はもちろんお絹自身も気付いていない。
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