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凍える月~吉之助の恋~
第8章 第三話 【初戀】 二
が、陽太が犯人ではないと言い切るだけの証拠もまた、どこにもないのだ。真犯人が見つからない限りは陽太にかかった疑いが晴れることはあり得ないだろう。貧しさゆえに店の金に手を付けた―、そう思われたことがいかほど純朴な少年の心を傷つけ打ちのめしたかは察するに余りあった。
「おいらは本当にしてねえんだよ、お絹―。なのに、寄ってたかって、皆でおいらを咎人扱いするんだ。このままじゃあ、おいらは本当に盗っ人にされちまう」
久しぶりに逢った陽太は「俺」といっぱしの男ぶった口ぶりになっていたが、いつしか昔のように「おいら」と言っている。それだけ、お絹の前では素の自分、ありのままをさらけ出せるのかもしれない。
「おいらは本当にしてねえんだよ、お絹―。なのに、寄ってたかって、皆でおいらを咎人扱いするんだ。このままじゃあ、おいらは本当に盗っ人にされちまう」
久しぶりに逢った陽太は「俺」といっぱしの男ぶった口ぶりになっていたが、いつしか昔のように「おいら」と言っている。それだけ、お絹の前では素の自分、ありのままをさらけ出せるのかもしれない。