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凍える月~吉之助の恋~
第8章 第三話 【初戀】 二
そんなお絹の反応には頓着なしに、お市は続ける。
「手代の愼太郎が遊ぶ金欲しさに二両盗んでいたのだと昨日になって判りました。愼太郎は、うちの店の遠縁に当たる店の息子なんです。商いの勉強のためにって、今、うちに見習い奉公に来ています。向こうの親御さんから預かってる形なので、父も今更、皆の手前、愼太郎が犯人だと公表することもできません。だから、あれは自分の勘違いで計算違いだったということにしようと言っています」
京屋では陽太が無断で店を飛び出したことで、陽太がやはり犯人だったのだという見方が決定的になった。古くから奉公する番頭などは「旦那様に眼をかけて頂いた恩を仇で返すとはこのことだ」と、主の市兵衛に陽太をお上に訴えてはいかがかとまで言い出す始末だ。
「手代の愼太郎が遊ぶ金欲しさに二両盗んでいたのだと昨日になって判りました。愼太郎は、うちの店の遠縁に当たる店の息子なんです。商いの勉強のためにって、今、うちに見習い奉公に来ています。向こうの親御さんから預かってる形なので、父も今更、皆の手前、愼太郎が犯人だと公表することもできません。だから、あれは自分の勘違いで計算違いだったということにしようと言っています」
京屋では陽太が無断で店を飛び出したことで、陽太がやはり犯人だったのだという見方が決定的になった。古くから奉公する番頭などは「旦那様に眼をかけて頂いた恩を仇で返すとはこのことだ」と、主の市兵衛に陽太をお上に訴えてはいかがかとまで言い出す始末だ。