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凍える月~吉之助の恋~
第8章 第三話 【初戀】 二
「そうか」
ただ、ぽつんとそう呟いただけの口調がとても淋しげに聞こえた。その変化に乏しい横顔からは何の感情も窺えない。まるで底なしの沼に石を投げ込むように手応えがない。そのあまりの反応の無さに、お絹はかえって拍子抜けした。
「お嬢さんも心配してたわよ。あのお嬢さん、陽ちゃんのことが好きなのね」
からかうように言うと、そのときだけ憮然とした。
「止せやい」
少し紅くなって頬を膨らませる様子がこちらも初々しい。思わずクスリと笑いを洩らすと、陽太がお絹を恨めしげな眼で掬い上げるように見た。
「いつまでも子ども扱いしやがって」
その拗ねようが実は子どもっぽいことに、陽太自身はいっかな気付かない。
ただ、ぽつんとそう呟いただけの口調がとても淋しげに聞こえた。その変化に乏しい横顔からは何の感情も窺えない。まるで底なしの沼に石を投げ込むように手応えがない。そのあまりの反応の無さに、お絹はかえって拍子抜けした。
「お嬢さんも心配してたわよ。あのお嬢さん、陽ちゃんのことが好きなのね」
からかうように言うと、そのときだけ憮然とした。
「止せやい」
少し紅くなって頬を膨らませる様子がこちらも初々しい。思わずクスリと笑いを洩らすと、陽太がお絹を恨めしげな眼で掬い上げるように見た。
「いつまでも子ども扱いしやがって」
その拗ねようが実は子どもっぽいことに、陽太自身はいっかな気付かない。