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凍える月~吉之助の恋~
第1章 【第一話 凍える月~お絹と吉之助~】 一
声と共に戸が閉まった。お絹は急いで男が出ていった引き戸を開けようとしたが、外から閂でもかかっているのか、戸はわずかたりとも動こうとしない。
お絹は小さな息を吐くと、もう一度部屋の中を見回した。耳を澄ませてみると、様々な音が伝わってくる。鳥のさえずり、風が樹々をざわめかせる音―。どうやら、ここは人が多くいる場所からは隔絶されているらしい。この狭い部屋も布団部屋か、もしくは物置代わりに使用されていた納戸に相違ない。
しかし、今のお絹には、なす術(すべ)はなかった。助けを求めようにも求められない。部屋にたった一つある小さな丸窓は、あまりに小さすぎ、しかも格子が網の目状に走っているので、到底、人一人が脱出できるものではない。
お絹は小さな息を吐くと、もう一度部屋の中を見回した。耳を澄ませてみると、様々な音が伝わってくる。鳥のさえずり、風が樹々をざわめかせる音―。どうやら、ここは人が多くいる場所からは隔絶されているらしい。この狭い部屋も布団部屋か、もしくは物置代わりに使用されていた納戸に相違ない。
しかし、今のお絹には、なす術(すべ)はなかった。助けを求めようにも求められない。部屋にたった一つある小さな丸窓は、あまりに小さすぎ、しかも格子が網の目状に走っているので、到底、人一人が脱出できるものではない。