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凍える月~吉之助の恋~
第1章 【第一話 凍える月~お絹と吉之助~】 一
お絹の父参次は四年前に流行病(はやりやまい)で亡くなったが、病に倒れるまで夜泣き蕎麦の屋台を引いていた。
お絹はまだ十八の娘ながら、父の跡を継いで屋台を引いている。一見小柄で華奢、頼りなげな風情の娘だけれど、腕力は大の男にも引けを取らないほどなのだ。幼い時分から父を手伝っていたゆえ、一人になってからも仕事を引き継いで困ることはなかった。
父の後を継いだばかりの頃、酔客に絡まれたお絹は当のけしからぬ男の腕をねじ伏せたこともあった。その日暮らしではあるけれど、若い娘一人が生きてゆくのには十分な稼ぎはある。参次が亡くなって以来、お絹は譲り受けた屋台を引き、商いを大事に守り継いできた。しがない夜泣き蕎麦屋ではあるが、お絹はこの仕事に誇りを持っている。
お絹はまだ十八の娘ながら、父の跡を継いで屋台を引いている。一見小柄で華奢、頼りなげな風情の娘だけれど、腕力は大の男にも引けを取らないほどなのだ。幼い時分から父を手伝っていたゆえ、一人になってからも仕事を引き継いで困ることはなかった。
父の後を継いだばかりの頃、酔客に絡まれたお絹は当のけしからぬ男の腕をねじ伏せたこともあった。その日暮らしではあるけれど、若い娘一人が生きてゆくのには十分な稼ぎはある。参次が亡くなって以来、お絹は譲り受けた屋台を引き、商いを大事に守り継いできた。しがない夜泣き蕎麦屋ではあるが、お絹はこの仕事に誇りを持っている。