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凍える月~吉之助の恋~
第2章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 二
     二

 お絹はハッとして、目ざめた。あの冷たい眼をした男が姿を消してから、泣いている中にいつしか眠ってしまったようだ。お絹は慌てて身を起こした。
 既に狭い部屋の内には濃い夜の気配が立ちこめていた。男がいたときには、部屋にはまだ夕陽がうっすらと差し込んでいたことを考えれば、少なくとも一刻以上は経過したに違いない。
泣き腫らした瞼が重い。こめかみに鈍い痛みを感じ、お絹は額を軽く押さえた。その時、後ろの引き戸が静かに開いた。例の男が影のようにひっそりと佇んでいた。男は真っすぐに歩いてくると、しゃがみ込んだ。つとお絹の方に手を伸ばし、その頬に触れた。
 そう言えば、夕刻にもこのような仕草をしたと、お絹はぼんやりと思い出していた。
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